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芋虫のあらすじ「人としての尊厳」

日本文学

江戸川乱歩の「芋虫」は、反戦的な表現が問題となり、発表当時は伏せ字だらけになった短編小説です。

今でも伏せ字の状態で販売されている本もありますが、新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」に収録されている芋虫は伏せ字なしで読めます。

そんな問題作である芋虫の内容とは、一体どんな内容なのでしょう。簡単なあらすじをご紹介します。

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江戸川乱歩「芋虫」あらすじ

登場人物は須永時子とその夫・須永中尉、大家の鷲尾少将の三人です。

身体の自由を奪われた男

須永中尉は戦争により両手両足、さらには聴覚や味覚まで失ってしまいます。

残ったのは視覚と触覚のみで、コミュニケーションの方法は目や体の一部を動かすことと、鉛筆を口にくわえてカタカナを書くことだけでした。

そんな須永の世話をするのは妻の時子です。彼女はいつしか、そんな須永を痛めつけて快楽を得るようになっていきました。

しかし須永は何をされても無抵抗で、そのことがさらに時子の嗜虐心を高ぶらせるのでした。

感情を表す目

両手足を失った須永に鉛筆書きを提案したのは時子でした。

最初は「クンショウ」などの文字を書き、新聞に載った自分の記事を眺めることで名誉に浸っていた須永でしたが、やがて夫婦の営みだけが生きる楽しみとなっていきます。

次第に無気力になっていった須永ですが、その目にはしっかりと喜怒哀楽の表情が表れ、それは時子にとって限りなき魅力となるのでした。

それと同時に、須永に対する歪んだ感情が彼女を支配するようになっていきました。

取り返しの付かない過ち

ある夜時子が明かりを灯すと、須永が天井の一点を見つめていました。時子はいつものように行為を始めようとしましたが、彼は鋭く刺すような目で時子のことを見ています。

その視線がひどく憎々しく感じられて、気がつけば須永の目を潰してしまっていたのでした。

我に返った時子は慌てて医者を呼び、須永に泣きながら謝罪します。そして彼の胸に、指で何度も「ユルシテ」と書くのでした。

須永の選択

須永は時子の謝罪にも一切顔色を変えずにいました。そんな様子に、時子は取り返しの付かないことをしてしまったと泣き出し、鷲尾少将のいる母屋へと駆け込みます。

長い間懺悔をし、二人で須永のいた部屋へ戻るとそこに彼の姿はなく、ただ枕元の柱に鉛筆で「ユルス」と書かれていただけでした。

須永を探しに外へ出ると、井戸の方へ向かう微かな音が聞こえます。そして次の瞬間には身体が見えなくなり、地の底からドボンという水音が聞こえてきたのでした。

感想

乱歩ワールド全開の物語だと言えるではないでしょうか。妖しさに一種独特のマニアックな趣向が加わり、読むものを異空間へと導くような雰囲気を感じます。

作品発表時はその表現にかなり問題があると判断されて、当局の検問からは全編削除を命じられたり、伏字だらけにされたり、ふんだりけったりな状況だったにも関わらず、乱歩自身はあまり気にしていなかったようです。

ちなみに奥さんに読ませたら、「いやらしい」と言われたとか(笑)。

須永中尉の気持ちとは?

物語は時子の視点で進んでいきますので、須永中尉の気持ちは分かりません。

戦争によって手足と感覚、さらに妻からは虐げられるようになったことで、何もかもに絶望していたのだとは思います。

しかし軍人としての誇り、男としての欲望、妻に対する想い、最期は自害という道を選んでしまったのは、妻を守りたかったからなのか、それとも自分に残されたわずかな人としての尊厳を守りたかったのか。

妻に「ユルス」という言葉を残した須永中尉は、自分の尊厳を守りたかったのだと思いました。だから妻を許したのではないでしょうか。

妻を守りたかったのではなく、自分の人としての尊厳を守るために、妻を許して逝った気がします。

映像化した作品のグロさ

2005年公開の映画「乱歩地獄」は四話のオムニバス形式になっており、すべて江戸川乱歩原作の映像化作品となっています。

芋虫の出演者は須永中尉に大森南朋さん、時子に岡元夕紀子さんです。

かなり前に見たのでうろ覚えですが、描写がけっこうグロかった印象があります。

ただ手足のない人間が出てきますので、生々しい描写が苦手な人にはおすすめしません。衝撃を受けると思います。

「乱歩地獄」に収録されているのは、「芋虫」の他は「火星の運河」「鏡地獄」「蟲」になります。グロいのが大丈夫で江戸川乱歩好きならけっこうおすすめです。

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