太宰治の「ヴィヨンの妻」は、昭和22年に雑誌で発表された作品です。
女性視点で書かれたこの小説は、ダメ夫を支えながらも強く生きていく女性を描いており、近年では2009年に「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」というタイトルで映画化されてます。
そんなヴィヨンの妻のあらすじとは、一体どんな内容なのでしょう。
太宰治「ヴィヨンの妻」あらすじ
物語は酔っ払った夫が帰ってきたことに気付く、妻の語りから始まります。
遊び人の夫を持つ妻
語り手の女性は、遊び人の旦那である大谷と二歳になる息子との三人暮らしをしていました。
大谷は仕事もせずに遊び歩いていたので、家にはお金もなく度々熱を出す息子を病院に連れていくことも困難な状況。
そんなある日、四十代の夫婦が家を訪ねてきます。彼らは大谷の行きつけである小料理屋の亭主とその妻でした。
そして大谷は逃げるように家を飛び出します。
小料理屋の夫婦と大谷
妻はやって来た夫婦をひとまず家に上げ話を聞くことにしました。すると、その夫婦は大谷が店の金を盗んだのだと言い、彼のこれまでの出来事についても話し出します。
初めて大谷が女性に連れられて店に来た時は、物静かで上品な印象だったといいます。
次に一人で来た時も、百円という大金を払い釣りも貰わなかったため、金払いの良い上客になると思っていたそうです。
しかし、大谷が店に金を払ったのはそれきりで、いつも人をだましてただ酒を飲んでいくだけでした。そしてついに店の金を盗んでいき、今回の騒ぎに発展したのです。
借金返済のために働く妻
話を聞いた妻は、自分がなんとか後始末をするので警察に行くのは一日だけ待って欲しいと頼みます。しかし、家にお金がある訳でもなく、何も良い案は浮かんできませんでした。
翌日、お金の都合がついたと嘘をつき、お金が来るまでは小料理屋の手伝いをすると言って店においてもらうことにします。
九時頃になり、店には変装をした大谷が女性を連れて来て盗んだ金を立替えていきました。問題が解決し、妻は胸につかえていた物が取れたような気持ちになります。
その後も、残りの返済するために店に置かせてもらえることになりました。
どうしようもない毎日を楽しむ
小料理屋で働く中で、店の常連や夫婦もみんな罪人であると知ります。そしてこの世というものに、大谷以上のどうしようもなさを感じつつも、それなりに楽しい日々を送っていた妻。
ある日、大谷のファンだという男が家を訪ねて来ましたが、大谷は不在でした。しかし彼は家に泊まることとなり、妻と一夜を共にします。
翌日、何もなかったかのように店に出るとそこには大谷がいました。
彼は、金を盗んだのは家族のためだったと言い訳をしますが、そんな大谷に対して一言、「私たちは生きていさえすれば良い」と言うのでした。
- 青空文庫:太宰治「ヴィヨンの妻」
- キンドル版:ヴィヨンの妻
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